静岡県牧之原市で園児が送迎バスに置き去りにされ死亡した事件から1年。国は送迎バスに安全装置の設置を義務付けるなど対策を進めています。一方で、死亡した千奈ちゃんの両親と園との溝は深まるばかりです。
◆あの日 千奈ちゃんは…
千奈ちゃん:
動いている、赤ちゃんが。わぁ見て
優しいまなざしで生まれたばかりの妹にミルクをあげる河本千奈ちゃん(3歳)。2022年9月5日 幼稚園の送迎バスに約5時間にわたって置き去りにされ、亡くなりました。
千奈ちゃんの父親:
(病院で)僕たちは泣き叫びながら千奈の名前を呼んだが、答えることはもちろんできない状態で 心臓マッサージを受けていた。心電図が動いていたので、「まだ千奈の脈があるということなんですか」と聞いたが、「マッサージをしているから動いている、止めるとゼロになります」と言われ、そこで本当に助からないんだということを、たたきつけられた
事件の約3カ月前に送迎バスに乗って自宅まで戻ってきた千奈ちゃんの姿を、両親が記録していました。
千奈ちゃんは職員が声をかけるまできちんと席に座っていました。席に座った状態でも、その表情をしっかりと確認できます。にもかかわらず、なぜ千奈ちゃんが車の中に残されていることに気が付かなかったのか。
◆謝罪会見で園長は…
増田立義元園長(当時):(2022年9月7日の会見)
(バスの)運転席から後ろ側が見えない。ですからこういう風にしてそっちだけ(ドア付近)は見ました。後ろの方は見えなかった。(Q.見えなかったのか、見なかったのか?)見なかった
警察は当時バスを運転し車内の確認を怠った増田立義 元園長と千奈ちゃんが教室にいないことを認識しながら 保護者に連絡をしなかったクラス担任など、関係者4人を業務上過失致死の疑いで書類送検しました。
検察の捜査が続く一方、増田立義 元園長を含めた園の関係者と月に一度、面談を続けてきた千奈ちゃんの父親は「怒り」を口にします。
千奈ちゃんの父親:
信じられない対応をされている部分があるので、 そこに関して怒りとか、そういったものは事件当初よりもさらに強くなっています
廃園をめぐり、2022年9月7日の会見では次のようなやりとりがありました。
増田立義 元園長(当時):
これからも私たちは色々なことで未熟な点がありますが、ぜひ皆様方のご協力を得まして、いい園を あるいは僕がいなくなったらさらに良くなるように
会見に同席した弁護士:
園を続けるかは決まっていません
増田立義 元園長(当時):
あ、そうか。廃園になるかもしれないね
◆父親「廃園の約束守って」
千奈ちゃんの父親によりますと、運営法人の理事長でもあった増田立義 元園長は川崎幼稚園の廃園と幹部職員の辞職を一度 約束していました。
現在は息子の多朗氏が法人の理事長に就任、幼稚園の運営は今もなお続いています。
父親は園に通う子供と保護者のために廃園ではなく別の法人に運営権を引き渡すことも条件として提案していますが、 法人側は応じる姿勢を見せていません。
千奈ちゃんの父親:
(私は)泣く回数は当初より減ってきてはいるが、妻は毎日涙を流していますし、自分の行動が正しいかどうか分からないですが、無念を晴らせたら晴らして千奈に報告できればなと
◆理事長「希望者がいる以上は継続」
そして9月4日、増田多朗理事長が11カ月ぶりに会見を開き謝罪した上で、入園希望者がいる以上 園を継続していく考えを示しました。
増田多朗 理事長:
千奈さんの幼く尊い命を奪ったことに対して心よりご冥福をお祈りするとともに、ご遺族様にはお詫びを申し上げたい。
(Q.運営は「在園児がいるまで」と説明していたが、募集した理由は?)
ご遺族の悲痛な思いは十分理解しています一方で、希望者がいる以上は園を継続しないと
あらかじめ報道機関が提出した質問にのみ、手元の紙に目を落としながら回答した増田理事長。
「自分たちのこれまでの対応のどういった部分が(遺族に)納得してもらえないのか、理事長の推察は?」など、想定外の質問には答えません。
事件から1年、両親の傷は癒えることなく園との溝はさらに深まる状況となっています。
◆安全装置の設置状況は?
今回の事件を受け、国は2023年度中に送迎バスに安全装置を設置するよう義務づけていて、5日静岡県内の設置状況が発表されました。
8月31日時点で県内の保育所やこども園など教育・保育施設の送迎バスは86.5%で安全装置が設置されています。6月末と比べると16ポイントほど増加しています。
再発防止にむけ安全装置の活用について、常葉大学保育学部・石田淳也 助教は「機械が常に完璧に動くとは限らないので、過信せず、目視での確認は5秒10秒程度のことなので怠らないようにすべきです。人と機械の二つで子供たちの安全を守っていくという意識は変わらず必要でしょう」と話します。
この安全装置の義務化について千奈ちゃんの父親は「必要なことだとは思うが、現場で働く人たちが本当に必要なものは何か、職員の配置人数の見直しや、よりフレッシュな気持ちで職員が働ける環境を作ることが大事」と話しています。
◆保育士の配置基準の見直しは?
保育士の配置基準については以前から課題となっています。
保育士が少なく子供に寄り添う保育ができないという指摘もあり、国は2024年度から1歳児については6人ごとに保育士1人から 5人ごとに1人に、4・5歳児については30人ごとに保育士1人から 25人ごとに1人に改善する方針を示しています。
常葉大学保育学部・石田淳也助教は「5人減っても世界的に見て少なくはない、多い。5人減るのは保育士の心の負担は減るかもしれないが、楽になるとは思わない。保育現場においても子供と接する大人の心のゆとりが大切なので、保育者の処遇改善や人員確保といった働く環境の整備が必要」としています。
2度とこうした事件を繰り返さない仕組みづくりを進めることはもちろんですが、園側には遺族の心に寄り添う姿勢も求められそうです。
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Негізгі бет 「廃園になるかもしれないね」謝罪会見で当時の園長が…廃園めぐり遺族と園で溝 園児置き去り死亡1年
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