古事記はもともと口承文芸なので、目で読む形ではなく、口で語って聞かせる形に現代語訳した。有名なストーリー「海サチ・山サチ」は「古事記」ではこのように語られている。出来るだけ原文に忠実に翻訳し、どう聞こえるかを確認するため自分で喋った。
「海サチ・山サチ」の話は竜宮城を思わせる御殿が登場し、殺伐とした「國譲り」の話から一転、牧歌的で神話的な話に戻る。おそらくこの話は後から挿入されたもので、元来のストーリーは「天孫降臨」から次の「神武東征」に直接繋がっていたと考えられる。なぜなら神武天皇となる神倭(かむやまと)伊波禮毘古(いはれびこ)には「日本書紀」ではもう一つ別名があった。それは「彦火火出見(ひこほほでみ)」。これは山サチビコである火遠理の命の別名「日子穂穂手見(ひこほほでみ)」と同じだ。つまり元来の伝承では、天孫族が出雲族に勝ち(國譲り)列島の覇権を九州の地で握った後、ホノニニギが天下りして(天孫降臨)、その後、子のホホデミが東の大和を制圧して支配権を確立した(神武東征)、というのが骨子だったのではないか。その後「海サチ・山サチ」の物語がホホデミの話として付け加えられ、それに合わせて山サチビコとイハレビコの間にもう一人ウガヤフキアヘズが創り出されたのではないだろうか。ウガヤフキアヘズという名はいささか安易な命名だし、これまでオシホミミ、ホノニニギ、ホホデミと、稲穂の「ホ」が付けられた皇統の名とは異質に感じられるからだ。
Негізгі бет 「口演 古事記」第五話「海サチ・山サチ」ほか -全-
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