昭和期を代表する洋画家、小磯良平(1903~88年)が描いた聖書の挿絵を紹介する企画展「小磯良平・聖書のさしえ展」(茨城新聞社など後援)が笠間日動美術館(笠間市笠間)で開かれている。小磯は、優れたデッサン力で清らかな女性像などを残した写実画家として知られ、一方で小説の挿絵なども数多く手掛けた。同展では、小磯が旧約・新約聖書の中から選んだ32の場面からなる水彩作品と、その下絵となったデッサンを展示している。
神戸市に生まれた小磯良平は、東京美術学校在学中に帝展特選を果たす。卒業後はフランスに渡り、帰国後は本格的に画家として活動を始め、新制作派協会の結成に参加。卓越したデッサン力を基に、清らかで上品な女性像をはじめ、静物や風景などの作品を残している。
小磯の作品のほとんどは、目の前にあるものをありのままに描く、写実を基にしたものだったが、唯一想像によって描かれたものが聖書の挿絵だった。信心深いクリスチャンだった小磯は、日本聖書協会からの依頼を受け、1970年に「口語訳聖書」の挿絵を完成させた。
本展では、笠間日動美術館が所蔵する水彩の挿絵作品32点と、その下絵となったデッサン合わせて75点を紹介。「エデンの園」「占星術の学者たち、イエスを拝む」「最後の晩餐(さん)」「十字架」「海を二つに分ける」といったキリストの物語を、淡い色彩で表現している。
このうち「十字架」は、キリストが自らを張り付ける十字架を運ぶシーンを描いている。建物の戸口からキリストを見詰める女性は表情こそ見えないが、キリストを案じる心情が伝わる。部屋の中の暗い壁は、悲しく不安な気持ちを象徴しているかのようだ。
同館の小又法子学芸員は「聖書の挿絵は、写実表現を得意とした小磯が唯一、イメージを膨らませて描いた作品。洋画とは違う新たな小磯像を探ることができる」と話す。会期は来年1月27日まで。画家50人の色彩表現に光を当てた「色彩は語る」も同時開催。
月曜休館(12月24日、1月14日は開館、12月25日、1月14日休館)。同館TEL0296(72)2160。
Негізгі бет 笠間日動美術館で小磯良平聖書のさしえ展
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