8月5日。幕張の夜空に2万発の花火が打ち上がった。コロナ禍で途絶えていた夏の風物詩が4年ぶりに帰ってきたのだ。
待ちに待った完全復活である。大会の陣頭指揮を執るのが千葉市観光協会の専門員、木村雅英(まさひで)さん(62)。
30年以上大会に携わってきただけに、4年ぶりの本格的な開催に思いはひとしおだ。
「大変不運な時を越えての大会になりますので皆さんに『来年また見たいね』って思う大会にしたい」とその意気込みを語る。
木村さんは大会の数日前には会場の浜辺で流木やゴミをスタッフたちと回収していた。実は花火を打った後の火の粉が枝葉につき、火災にならないよう片付けているのだ。
そしてもう一人、この花火大会に思いを寄せるのが花火師、山﨑智弘(ともひろ)さん(40)
全国数々の花火大会で優勝経験がある名人。茨城県にある山﨑煙火製造所(やまざきえんかせいぞうしょ)の4代目である。
花火の玉作りから打ち上げの演出までを取り仕切っている。
「コロナが落ち着いたということで閉塞感を打ち破るような派手な演出を見せたい」と気合い十分だ。
大会前日に会場に運び込んでいたのは花火を打ち上げるための筒。打ち上げ場所となる堤防などに次々と設置する。
見ると発射用の筒を斜めに傾けて設置していた。実はこれには狙いがある。まっすぐ空に向かって打ち上げられる花火は、
目線が高く見上げる形となるが、斜めに打つと、目線の高さになり、いつもとはちょっと違う臨場感のある花火が楽しめるのだという。
山崎さんは「(花火を)斜めに打つとパノラマ状に見える。なかなか関東にもない」と教えてくれた。幕張だからこそできる演出。
会場が海岸だから海に向かって花火を打つことが出来るのだ。この“幕張の海を生かした花火“は、運営側の木村さんが山﨑さんに相談し実現したもの。
花火の玉の仕込みは、海風が吹く中の設置作業。危険と隣り合わせだ。振動や摩擦に注意して導火線を接続していく。
「これ火薬入っているからいつドカンといくかわかんない。慎重にやらないと」山崎さんはそう話す。
本番前には会場に続々とお客さん。およそ7万5千人が集まった。久しぶりの花火大会に子どもたちも楽しみにしているようだ。
一方、木村さんたちは消防や警察の担当者と会場での最終安全確認を終え、いよいよ本番が始まる。
まずは一発目が幕張の夜空へ。大会の運営者、花火師、観客、誰もが待っていた瞬間が来た。
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