安全地帯II』は、最大のヒット曲である4thシングルM1「ワインレッドの心」から幕を開け、アルバムの先行シングルだったと言える5thのM2「真夜中すぎの恋」に続き、そこから1曲挟んでのちに6thとしてカットされたM4「マスカレード」、さらにもう1曲挟んで5thのカップリングM6「…ふたり…」と流れていく、パッと見はさながら初期シングル集のような作りだ。とにかく頭から「ワインレッドの心」「真夜中すぎの恋」
安全地帯を語る上で本当に改めて言うことではないが、でもそこを無視してはこのバンドを説明できないもの──それは玉置浩二のヴォーカル、その圧倒的な存在感である。まずそこから語ろう。ここを読んでいる方の中によもや氏の歌を聴いたことがないという人はいないだろうが、もしいるとするなら、こんな駄文を読むのはすぐに止めてKZitemとかでいいので玉置浩二の歌声を聴いたほうがいい。百聞は一見に如かずではないが、どんなに美辞麗句を並び立てても、その形容が氏の歌の素晴らしさを上回ることはないと思う。徳永英明やコブクロの黒田俊介が“日本一歌が上手い”、スキマスイッチの大橋卓弥が“最も尊敬するヴォーカリスト”と評しているというし、EXILEのATSUSHIがその歌唱力に圧倒されて玉置の自宅マンションに訪問して歌唱指導を受けたという逸話もある。当代随一のヴォーカリストたちがリスペクトの念を惜しまない姿勢からも氏のすごさが分かろうというものだ。その情感たっぷりに歌い上げるスタイルは「恋の予感」「悲しみにさよなら」「碧い瞳のエリス」「夏の終りのハーモニー」(※井上陽水・安全地帯名義)、「じれったい」と楽曲を発表する毎に、より迫力を増していった印象はあるが、もちろんそのヴォーカリゼーションは本作でも十分に堪能できる
サウンドが過渡期のものであった一方、歌詞においては、ここからが万人がイメージする安全地帯が始まったといってよい。「ワインレッドの心」の歌詞を井上陽水が手掛けたことは先に述べたが(続く「真夜中すぎの恋」も井上陽水作詞)、それ以外は全て作詞家の松井五郎氏が書いている。松井五郎氏は長きにわたって安全地帯の作詞を担当し、“6人目の安全地帯メンバー”とも言われたが、その端緒が開かれたのが『安全地帯II』である。
《哀しそうな言葉に/酔って泣いているより/ワインをあけたら》《今以上、それ以上、愛されるのに/あなたはその透き通った瞳のままで/あの消えそうに 燃えそうなワインレッドの/心を持つあなたの願いが かなうのに》(M1「ワインレッドの心」)。
《誘われて うなづくまでの間/そのあとで 星座の見えるベランダへ/銀のピアスならはずれてる/夜につれられてゆくなら今》《サヨナラが聞こえてきたら泣いてね/ため息は こわれた胸のささやき/どんなドレスでもかまわない/夜にはおられてゆくなら今》(M2「真夜中すぎの恋」)。
「ワインレッドの心」は玉置氏からダメ出しされて書き直したとはいうものの、やはり陽水作品には、凡人に描けないこと間違いなしの世界観が天才的な言葉遣いで綴られているが──。
《あなたは嘘つきな薔薇/いま心なくしたまま/枯れてしまいたいのなら/その胸をあずけて》《あなたは嘘つきな薔薇/身を守る棘ももたず/ためいきの理由をかくし/まだゆれ続くだろう》(M4「マスカレード」)。
《裸足のままジルバ/凍てつくつまさき/微笑みかけすぐに/心かくして/たそがれてる あなたを/燃えるように 悲しませてあげたい》《夢みながらワルツ/めまいを愛して/やさしすぎるそぶり/みむきもしない/たそがれてる あなたを/燃えるように 悲しませてあげたい》(M9「ダンサー」)。
松井作品では陽水作品にあった妖艶さはそのままに、職業作家ならではの巧みさ、いい意味でのプロフェッショナルな仕事っぷりで、安全地帯楽曲の奥行きを広げていったと言える。前述したサウンド面と相まって、リスナーに“安全地帯=大人なロック”という認識が早くから浸透したのは歌詞によるところが大きかったのではなかろうか。
また、話は少し安全地帯から離れるが、松井氏は安全地帯以外にもニューミュージック系、ロック系のアーティストにも歌詞を提供しており、BOØWYや氷室京介、吉川晃司の作品を手掛けている。BOØWYでは「Dreamin'」(布袋寅泰と共作)、氷室京介は「KISS ME」や「VIRGIN BEAT」、そして吉川晃司では「KISSに撃たれて眠りたい」(吉川晃司との共作)がその代表的な曲だが、それを頭において『安全地帯II』収録の以下の歌詞をご覧になっていただきたい。
《マリア ほほえみが胸をさす こともある/そっと投げられた イミテーションは/NO!! と言うのさ》《愛した男の数だけは/泣きだす女があらわれる/あなたの噂を気にしたら/心がかわいてたまらない》(M7「真夏のマリア」)。
まぁ、安全地帯らしくないこともない歌詞ではあるが、《マリア》や《イミテーション》や《NO!! と言うのさ》なんてフレーズはどこか上記のバンド、アーティストにも通じる匂いがなくはない
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