何百年、何千年もの歴史を持っている分野も多い数学の世界。勝良研究室の研究対象となる作用素環論はそれに比べ歴史が浅く1929年、20世紀科学史における最重要人物の一人であるフォン・ノイマンによって、量子力学を数学的に記述するという目的のために生み出されました。
Q「作用というのは普通の日本語の作用で、あるものに何か作用する、というもので、私の専門の作用素環では、作用されるものというのはヒルベルト空間と呼ばれる抽象的な数学的対象のもののことで、それに作用するもののことを作用素と言います。作用というものは何かある一つの作用をしてから別の作用をする、というのをまとめて一つの作用と思うことで掛け算の構造が入ります。また、ヒルベルト空間と呼ばれる対象には、足し算の構造が入っていて、それを用いて作用素の間にも足し算を定義することができます。このように足し算と掛け算が考えられるものを数学では環と呼んでいますが、作用素環論ではそのような作用素が成す環の様々な構造を調べています。」
作用素環論の数学的特徴は「無限」「位相」「非可換」という3つのキーワードで表すことができます。「無限」とは対象が無限の大きさを持つものであり、有限の世界では現れない不思議な現象が色々と現れます。
また作用素環論では、対象の持つ無限性を病的なものとして排除するのではなく、様々な道具、手法を用いて飼いならそうとします。その最も強力な道具が2つ目のキーワードである「位相」です。作用素環論では状況に応じて異なる「位相」、C*環(シースターかん)とフォン・ノイマン環を用いることで「無限」を統制しようとします。
最後のキーワードの「非可換」とは、順番を変えて積を考えると結果が異なるという現象を表しています。普通の数では積は順番にはよりませんが、行列の積がそうであるように作用素の積は順番を変えると異なる結果になることがあります。
Q「私は集合論と作用素環論の境界領域でも研究をしています。集合論というのは作用素環論よりも、より直接的に無限の対象、もしくは無限そのものを研究する分野です。有名な例としてヒルベルトホテルと呼ばれている話があります。」
ヒルベルトホテルでは部屋が無限にあり、たとえ満室でも新たに客が来た場合、1番の部屋に泊まっている人に2番の部屋に移ってもらい、2番の部屋に泊まっている人を3番の部屋に、というように1つずつ隣の部屋に移ってもらうことによって1番の部屋を空室にすることができます。この方法を使うと、もし無限人の客が新たにやってきたとしても、今度は1番の部屋の客を2番の部屋に、2番の客を4番、3番の客を6番、4番の客を8番と、N番目の部屋に泊まっている客に2N番目の部屋に移ってもらうことで奇数番室を全て空室にすることができるので、無限の人を泊めることができます。さらに、無限人の客を乗せたバスが無限台やってきたとしてもうまく工夫すれば全員を泊めることができる、という現象が起きます。
勝良研究室で研究を進める学生は作用素環論の他にもタイリングとシースター環の関係や集合論、論理学の研究など幅広い興味を持って挑み、まだまだ未解明な数学の分野を切り開くべく研究を進めていきます。
Q「違う分野との関連、ちょうど境界領域に面白いことが転がっているということがすごく多いと思いますので、学生の方には専門の勉強というのはもちろん大事ですが専門以外、数学で言えば他の分野の数学、それだけじゃなく物理学や化学、理学工学に限らず色んな芸術とかたくさんのものに興味を持って欲しいと思っています。」
Негізгі бет 勝良研究室 不思議で奥が深い『無限』の数学と作用素環論の研究
Пікірлер: 2