【東京音楽大学 弦楽アンサンブル第30回演奏会】
2020年10月24日(土)17:30開演
TCMホール(東京音楽大学 中目黒・代官山キャンパス)にて収録
Tokyo College of Music
30th String Ensemble Concert
TCM Hall , Naka-Meguro-Daikanyama Campus
24 October 2020
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演奏:アンサンブル・エンドレス / String Ensemble Endless
指揮:鈴木 秀美 / Conductor : Hidemi Suzuki
A.ドヴォルジャーク/弦楽セレナード ホ長調 作品22,B. 52
A. Dvořák / Serenade for String Orchestra in E major, Op.22
0:00:00 Ⅰ. Moderato
0:06:51 Ⅱ. Tempo di valse
0:13:48 Ⅲ. Scherzo: Vivace
0:20:12 Ⅳ. Larghetto
0:25:25 Ⅴ. Finale: Allegro vivace
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0:34:36 A.シェーンベルク/浄夜 作品4 : 弦楽合奏版(1917年版)
A. Schoenberg / Verklärte Nacht, Op.4 : Revised version for string orchestra, 1917
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《ごあいさつ》 東京音楽大学客員教授 鈴木秀美
この学校で教え始めた数年前のある日、《エンドレス》というオソロシイ名前のクラスがあることを知り、またそれをヴァイオリンの荒井君(高校からの同級生なのでそう呼ばせていただく)がやっていると聞いて、そりゃいかにも荒井がやりそうなことだと笑っていたものだった。
名前の由来はもう少し古く、また指導者は持ち回りであって荒井君のみと関係するものではないと聞き、安心したようながっかりしたような心持ちであったが、自分がそれをお引き受けすることになろうとは思っていなかった。私はこの学校ではチェロ科の教師、試験で弦楽器の皆さんの演奏も聞くが、オーケストラの授業には加わっていない (正直なところ、加わらないようにしていた。人生の時間はエンドレスではない…)。しかし何はともあれ、お引き受けしたからにはじっくりやろうと思っていたのだが、コロナの異常事態となって授業回数は予定よりはるかに減り、練習時間は大いに『エンド』有りとなってしまった。しかし少なくとも、そして有難いことに、今日取り上げる2つの名曲が私達に与えてくれる感動や想像、そして思索の世界には際限が無い。
アントニーン・ドヴォルジャーク(1841-1904)のセレナーデは、その前年の1874年に結婚し、またオーストリア政府から高額の奨学金を得ることになった状況の中、1875年5月にわずか12日間で書き上げられた。この奨学金を彼は5回連続で受けており、1875年からはブラームスがその審査員に加わっている。1877年の申請時の提出作品には、このセレナーデも含まれていた。
「ボヘミアの田舎者」であり、そして貧しかったドヴォルジャークは、この奨学金やブラームスのお陰もあって世に知られるようになったのであったが、彼の作品に溢れるメロディの数々は、そのブラームスさえ羨むほどであった。若いドヴォルジャークの作品の数々を目の当たりにしたブラームスの感動と驚きはいかばかりであったか。
どこか懐かしく「故郷」を想わせるような温かさに溢れた冒頭のテーマは、物語の最初のページのように、たちまちのうちに聴くものを別世界へと引き入れる。そしてそれは最終楽章の終わりにも再び顔を見せて、安堵を与えてくれるのである。シャープ系の調性で、やや神経質、不安定な雰囲気のワルツも、そのトリオ部分は落ち着いて、心に染み入る歌を聴かせる。活発な第3楽章と激しい最終楽章に挟まれた緩徐楽章はひときわ内省的だが、それらのそこここに、数え切れない歌がある。ドヴォルジャークは何と言っても最高のメロディ・メーカーなのである。
なおこの曲には、既に初版の段階で第3楽章と第5楽章に大きなカットが施されていたが、それは恐らく出版社(Bote&Bock)の意向であり、少なくとも作曲者の最初の意志ではなかった。まだ売れ始めたばかりの彼が出版社の提案を断れなかった状況は想像出来る。2016年出版のベーレンライター版によって初めて正しく復元されたので、本公演ではその部分も含めて演奏する予定である。曲をよくご存知の方は、その違いもお楽しみいただきたい。
さて、アーノルト・シェーンベルク(1874-1951)の名前は、後に彼が築き上げた「12音技法」と共に、殆どそれとセットとしてのみ知られているが、《浄夜Verklärte Nacht》は1899年、まさに世紀末の美学の中弦楽六重奏として書かれた初期の作で、ブラームスやヴァーグナーの影響を受けた後期ロマン派の音楽である。とはいえ調性的な和声は時として崩壊寸前、当時としては充分過ぎるほど斬新な半音音階的手法が用いられている。しかもリヒャルト・デーメル(1863-1920)の、性についておおっぴらに語った詩に付けるという珍しい形で作られた《浄夜》は大いに議論を巻き起こした。それ以前に作曲された弦楽四重奏曲はウィーンの楽友協会に受け入れられ演奏されていたが、《浄夜》は受け入れられなかったのである。そしてそれ以降、シェーンベルク本人も述べているように、彼の作品の周りには常に賛否両論の議論が絶えなかった。なお、弦楽オーケストラへの編曲は1917年にされ1943年に改訂されているが、今回演奏するのは1917年版である。
詩の内容に沿って、作品は幾つかの部分に分かれている。明らかにそれと解る箇所もあるが、必ずしもどの部分が詩のどこに対応するかと『標題音楽』のように聴き取ることがこの作品の最も良い聴き方とは限らない。それよりむしろ、過去と現在、善と悪、歓喜と苦悩、理性と官能等々、様々な意味の狭間で揺れ動く感情や葛藤を音で表現した若きシェーンベルクの深い洞察を、音のうねりと共に感じていただきたく思う。
《浄夜》を書いた時シェーンベルクは25歳。さほど歳は違わない学生の皆さんが、これらの作品と今日の演奏会から多くを感じ取り、それが今後の人生の糧となるならば、教師一同の歓びは文字通り「エンドレス」というものである。
主催/東京音楽大学
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