同格というのは根本的には「シンプルな名詞」+「より詳しい情報を持った名詞・説明的な名詞」という2つの名詞を並べることで情報を補う表現方法です。 例:Popeye the sailer man:「船乗りポパイ」 説明の内容の情報量が多いほど、その形式は複雑になります。以下の例では説明の情報が多くなるにつれて同格の内容が名詞句から同格の不定詞の形容詞的用法、さらに同格のthat節へと膨らんでいます。 Popeye the sailor man「船乗りポパイ」→名詞+名詞句 the way to solve the problem「問題解決の方法」→名詞句+同格の不定詞の形容詞用法 the fact that he couldn't solve the problem「彼が問題を解決できなかったということ」→名詞句+同格の接続詞that+節 ですからひとつには、「同格の形の違いは、説明する情報量の差によって生まれる」と言えます。 もうひとつですが、「同格の形の違いは、説明する情報の『性質』によって生まれる」と言うこともできます。 Popeye the sailor manのように、名詞句による同格は職業、身分などのアイデンティティを述べることがふつうです。そして、同格の不定詞の形容詞的用法の場合、「用途・目的」を述べることが一般的です。the way to solve the problemは「何のためのway(やり方)なのか」=「問題を解決するための」と言えますし、You have the right to ask for it.(あなたにはそれを求める権利がある)なら「何のためのright(権利)なのか」=「それを求めるための」と言うことができます。同格のthat節の場合、抽象的な先行詞の内容を具体的なthat節の内容が説明するという、比喩的に言えば「抽象的な器の中に具体的な説明を入れる」という関係が発生します。 例えばthe fact that he couldn't solve the problemなら、the factは「事実」という抽象的な情報ですが、そのthe factの具体的な内容をhe couldn't solve the problemが説明しています。一方で似たような形を持つ関係代名詞節では先行詞が具体的な名詞であることが多く、後続の関係代名詞節も「説明」というよりは「限定・情報を絞る」ための役割であることが普通です。例えば、the girl that I was talking about(私が話題にしていた女の子)なら、the girlは「その女の子」という具体的な情報ですし、I was talking aboutは「他の女の子じゃなくて、私が話題にしていた女の子のことだよ」というふうに「女の子」の情報を絞っています。同格のthat節と関係代名詞節は慣れると「thatの後ろが完全な文かどうか」などといった形の違いに注目しなくても、読んだだけでパッと判断できるようになりますが、それは上記のような「意味の違い」が存在しているからです。 最後に、本来名詞的な働きである同格の不定詞がなぜ形容詞用法に分類されるのか、の不思議について述べます。 同格がなぜ同格と呼ばれるのか、と言えば、左右どちらも名詞という同じ品詞の成分を持っているからです。Popeyeも名詞ですし、the sailor manも名詞です。名詞を、同じ品詞である名詞で説明しているので同格と呼びます。ですから、the fact that he couldn't solve the problemのような同格のthat節ではthat he couldn't solve the problemは品詞的には名詞節に分類されます。 しかし、品詞の観念で言えば、名詞を説明するのは本来は形容詞がやることです。a big deskのbigという形容詞はa deskという名詞の様子を説明しています。the girl that I was talking aboutという関係代名詞節もthat I was talking aboutはthe girl の情報を説明する形容詞節に分類されます。 似ていてややこしいですよね。 言語学では名詞には純粋にものの名前を表す「名詞らしい名詞」がある一方、同格の名詞のように「名詞の様子を説明する、形容詞的な性質を持つ名詞」もあり、それは、色で言えば「赤らしい赤」とその隣にある「黄色らしい黄色」、その中間にある「オレンジ色らしいオレンジ色」の間に明確な区切りがなく、徐々に程度が変わっていくように、名詞と形容詞の間には徐々にそれらしさの度合いが変化していくスペクトル的な関係があると考えています。 不定詞の形容詞用法は先行詞である名詞の「用途」を説明するためにあります。たとえばa house to live in「住むための家」なら、a houseの用途をto live inが説明します。同格の不定詞もthe way to solve the problemのように、「用途・目的」を表すことが多いので、「仕方なく・便宜的に」形容詞用法に分類されているのではないかと思います。
新しい英語の世界が見えてとても楽しいです。ありがとうございます。that節 の質問していいですか。 I am sure that you'll be a great photographer.と I was happy that you sent me a letter. のthatはそれぞれ何節でしょうか。中学2年の教科書(one world)にでてくるのですが、副詞節か名詞節かで悩んでいます。
@TokiyoshiEnglishCompany
Жыл бұрын
学者によって意見が分かれるところですが、名詞節なのか副詞節なのかを分析することはほとんど意味のないことだというのが私の考えです。それよりもどういう心理がこの文法構造を生み出したのかを考えるべきです。すでに私の書籍や動画で頻繁に触れているように英語の語順の2大原則は①言いたいことから先に言う②軽い情報が先重い情報が後、ですがここでは②が発動して簡潔な結論(I am sure, I was happy)が先に来て、その後に確信の内容、嬉しい内容を表すthat説明(具体的で重い情報)が来ています。この原則に沿っているので、ネイティブには違和感がないのです。 あえて言うならこれはI feel that SVやI think that SVという感覚の応用として生まれた構文で、自分が「感じ」たり「思う」ことを表す「be動詞+形容詞」がfeelやthinkと同じように使われていると考えるのが妥当です。そう考えるとthat節は一種の「目的語」と同じように使われているので、心理的には名詞節です。 このような「破格」の文法は他にもあります。becauseは副詞節しか作らないのが普通ですが、「〜だからといって、〜だとういわけではない」というフレーズではJust because SVが主語、つまり名詞節として使われる場合がよく見られます。 Just because it won't come easily doesn't mean we shouldn't try. (簡単にうまくいかないからといって、やってみるべきではないということではない Bruno MajorのEasily(2017)という歌の歌詞より) just because it won't come easilyという本来副詞節であるものが主語、つまり名詞節として使われています。本来はjust because節のあとにit doesn't mean...があり、itがjust because節の内容を指していたと思われますが、日本語でitがほとんど訳されないことでわかる通り情報的にほとんどあってなきが如しなので、省略されるようになったと考えれられます。 上記の例は歌詞ですが、ライティングの指南書を書く著名な米国の作家でさえ同じ構文を使います。 Just because they're writing fluently doesn't mean they're writing well. (流暢に書いているからといって、その人たちが上手に文を書いているわけではない) William Zinsser "On Writing Well"より 日本語を振り返ってみますと、ゲームのタイトルで有名な「龍が如く」というのがあります。「〜が如く」の前には普通、「龍のように空を駆けるが如く」のように動詞がきます。「龍」のような名詞の場合は「龍の如し」「龍の如く」といったように、「が」ではなく「の」がきます。 ここで「間違い」をあげつらうのは簡単ですが、それは重要なことではないと思います。言語というのは時と共に変化していき、文法もまた変化していきます。毎年無数の「若者言葉」「はやり言葉」が生まれますが、そのほとんどは数年もしないうちに死語となります。しかし、中には生き残る言葉もあります。つまり、もともと「まちがって」生まれた言葉のなかに「多くの人の共感と支持を呼び、日常生活で採用された結果、新しい言い回しとして定着する」ものがあるわけです。それがjust because節や「名詞+が如く」かもしれません。文法というのはネイティブによる「人気投票」で決まるのです。 ご質問にあった「人+be動詞+「思う・感じる」系の形容詞+ that SV」という構文は多くの人に「それいいじゃん、便利」「feelやthinkと同じ感覚ね」といったかんじで受け入れられ、今では誰も文句を言わない、しっかりと定着した英語表現になっているわけです。
@なっちゃん-g9x4m
2 жыл бұрын
とても参考になります、これからも拝見します^^
@kiyomar4763
2 жыл бұрын
今回も大変素晴らしい解説をして下さりありがとうございます。 できましたら、「人の感情を表す形容詞の直後のthat節」についてもご説明頂けると幸いです。この場合のthat節は、人の感情を表す形容詞の「理由」を示す、と言われるようです。このthat節が「理由」を示すならば、because節などと同様に副詞節になるのでしょうか? また、特に、be sure that節・be certain that節や、I am afraid that節などにおけるthat節は、sureやafraidの「理由」を示すというよりは、「~について(about~/of~)」を示しているように思えますが、どうでしょうか? 例)Are you sure (that) Mike turned the light off?(Mikeが電気を消したことは確かですか or 消したことについて確信していますか)
@TokiyoshiEnglishCompany
2 жыл бұрын
例えばbe happy to不定詞やbe glad to不定詞が不定詞の副詞的用法(形容詞happyやgladの理由を説明している)であることを考えると、これがthat節になっても副詞節のthatと考えるのが妥当な気がします。しかし、こういう用法が事実としてあるのだ、ということを知っておけば、用法が何なのかはとても些細なことで、分析することに意味があるのか、という気持ちもあります。sure that節に関しては、様々な意見があり、例えばロイヤル英文法の38pの2〈S+V+C+A〉の欄にはI am sure that he is honest.の例文と共に、「that節は前にof the fact が省略されたと考えると名詞節。」とあります。確かにそう考えても良いと思いますが、私は個人的には、be sureやbe afraidは事実上一種の動詞として(例えばbelieveやfeelなどと同じように)英語話者に認識されているのではないかと考えています。ですから、その後ろにつくthat節やwh節は目的語の役割を表す名詞節と捉えても良いのではないかと思っています。
@kiyomar4763
2 жыл бұрын
@@TokiyoshiEnglishCompany 早速、詳しい回答をして下さいまして本当にありがとうございます。特に、be sure や be afraid は事実上動詞の一種として考えれば、それに続くthat節は(事実上の動詞の)目的語の役割をする名詞節だと捉えられる、とのご指摘は、大変に説得力があると感じ入りました!! それが話すときの感覚にもしっくりくる感じがします!!!
there's a rumor that の分ですが、 a rumor とa comeback とaが付くのでしょうか?
@TokiyoshiEnglishCompany
Жыл бұрын
there's a rumorという言い回しの時にはa rumorとなります。
@ほのほの-n4l
2 жыл бұрын
I think that sv みたいな文で、質問です。 色々英文を聴いていると I think that / sv I think / that sv の2パターンで読まれるのを聞きます。 音読する際、かなり悩まされてます。 どっちが正しくて、どっちかかが間違ってるのか。または、どっちもあって、話し手の心情とによって読み分けてるのか? よろしくお願いします。
@TokiyoshiEnglishCompany
2 жыл бұрын
どちらでも間違いではありません。実際にご指摘の英文を聞いているわけではないのであくまで推測ですが、「〜と思うんだけど」というように断言を避けるためにI thinkを軽く添えるつもりで使うときは一気にI think that まで軽く速く言ってしまい、自分の意見はこうだ、という気持ちが現れればI thinkで一度ポウズを置くということでしょう。
@ほのほの-n4l
2 жыл бұрын
自分が見て気になった映像も 先生のを聴いた後に見返すと I think /のときは、意見はこうだよ という気持ちというのは、わかる気がします。 丁寧に答えてくださり ありがとうございます。 勉強になります。
@pururupurusan
5 ай бұрын
3:41
@k5698
6 ай бұрын
コメントをここに投稿しましたが、場所を間違いました。分詞構文を視聴しての感想です。すみません。
@yukim8659
2 жыл бұрын
大変分かりやすい動画、本当にありがとうございます。 もしお答えいただけたら嬉しいことが1つありまして、関係代名詞の主語の働きをするもの以外で、 省略できるthat、できないthatがどう振り分けされるかで何か月も詰まってます(^^;。 例えば、 ①We should not forget that friendship is so important. ②The reason is that you didn't come on time. 上記2つはthatが省けないと聞きました(なぜでしょうか?) それ以外にもまだまだあるかもしれないです・・・。 thatを常に置けばいいですが、ちょっと見劣りする気もしまして・・・教えて頂けると嬉しいです。
ご質問ありがとうございます。もちろんask it of 人もつかわれますが、ask it to人も一般的に使われます。 Well, let me change that, Andrew. Let me ask it to you this way. (CNNのインタビューにて) Governor Romney, I'd like to ask this to you first, please. (CNNのインタビューにて) This is a question that I've only ever asked Don Rickles, but I'll ask it to you, too. (NPRのインタビューにて)
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