直近にWRX S4の出来の良さにちょっと興奮したのちに、同カーシェアリングでしかも比較的近所に新型クロストレックが配車されていることを知り、半ば衝動的に借りてみました。
結論から申し上げますと、このクルマは私からは”ない”ということです。
いいクルマというのは動き始めの5メートルでわかるといわれたりしますが、
案外言い得て妙でして、WRXは動き始めからして「おっ!」という期待に胸が
膨らみましたが、このクロストレックについてはそういった感覚はありませんでした。
最初のほうは、なるべくいいところを探そうとおもい、忖度気味なコメントを述べています。
「よくできた国産車」。さてこれがスバルが目指すものでよいのでしょうか?
私はちがうとおもいます。
日本ではある程度人付き合いの関係もありますし、定期的にスバルしか選ばないお客さんも
いますが、じつのところ車種が増えてもシェアは伸びていないとおもいます。4代目インプレッサが
大ヒットしましたが、あれはアイサイトのインパクトが強かったからであって、クルマとしての
出来で売れたわけではありません。一方で海外では5代目レガシィやフォレスター等が大ヒットし、
米国でのシェア拡大にやっきになりました。まあ、米国では現地生産工場もありますし開発の拠点もあるのではないでしょうか。
ただ、米国でスバルを買っている人は決して、その車の性能の高さだけではなく価格の安さも大きな要因であることは明白であり、事実日本では400万円するレガシィが現地では1万ドル台から販売されていました(今は2万ドル半ばまで値上がりしてますが、物価自体があがっていますから直接比較はできないです)。
また、米国は訴訟国家ではありますが、クルマへの造詣はさほど高いものではありません。
それはレース文化も欧州ではF1やWRC、ツーリングカー選手権が人気を博しているのに対して
米国ではおもに直線をジェット燃料でただ直線を加速するだけのドラッグレースや、オーバルコースを走り続ける”だけ”ともいえるインディカーやNASCARがメインであること。さらに言えば税制優遇されるピックアップトラックがベストセラーカーが君臨し続けていることからも明らかなことです。
つまり2010年にWRCを撤退して以降、クルマ作りの方向転換をおこなっています。
また主要株主がGMからトヨタへ変わったことによる影響も大きな要素でしょう。
GM参加のままならば欧州市場を重視したクルマ作りを継続できたかもしれません。
しかし、それでは収益があがらない。高評価を得たディーゼルエンジンも、欧州の厳しい
環境基準をクリアできず、たぶん原価償却できる前に撤退を強いられました。
スバルのまじめなクルマ作りはトヨタへ良い影響を与えたように思います。その結果がGRヤリスやヤリスクロス、RAV4のようなクルマたち。ヤリスも1Lバージョンはどうしようもないクソ仕様ですが、1.5Lはだいぶ様相がちがうようです(わたしは乗ったことはありませんが・・)自らもトヨタの”良いところ”を取り入れたのだとおもいます。しかしトヨタほど余力のないスバルは世界市場全体のシェア拡大には舵を米国一本に絞りました。その結果、収益性は大きくあがりました。米国ユーザーは欧州のそれとは比較にならないほどに”おおらか”でありまた幅広い多民族国家であるため、変な差別意識もなく実利志向でクルマ選びをします。
しかし、副産物として以前のスバル車にあった、普通にクルマを動かした瞬間に感じられた”良いもの”感や高速域での安定性はごく一部の高付加価値のグレード以外のクルマからは消えてしまったようにおもいます。
3代目レガシィ以降採用されたリンク式リアサスペンションは低い位置にショックアブソーバーを配置し、かつ短いトレーリングアームやプロペラシャフトを通すため十分な長さを確保できないロアアームの短いサスペンションはフロントの上下方向のストローク量の多いストラットサスとの相性はとても悪いものであるように感じます。それでも、3代目レガシィの後期型や車高の高いアウトバックやフォレスターでは、そのネガをうまく消し去ることに成功していたように感じていたのですが、あるところから後退してしまっているのではないか、今回の新型クロストレックでは、チョイ乗りする程度では柔らかい乗り味で印象も決してわるいものではありませんでした。しかし、アクセルに対する反応のにぶい電子制御スロットルとバッテリーによる補助トルクが使えるシーン、そうでないシーンにより加速が安定しないこと。長い時間高速走行をしているとバッテリーの充電が不足するとただの”重石”をラゲッジ下のスペースに積み、ただの遅く燃費の悪いクルマになってしまいます。
また、FB20というエンジンもレギュラー仕様にしてしまったため、非情に中途半端な加速性能と燃費性能にとどまり、同じブロックのFB16のように軽快に回ることもしないため、なんとも評価しにくいものになってしまっています。これならガソリンだけのほうがましですし、リアも軽くなることで、もっと楽しい走りのできるセッティングにできたはず、FF駆動ならなおさらです。
今回、乗りながらせっかくのFFの利点を全く感じることができませんでした。加速時はフロントが浮き、トラクションが逃げる。カーブでアクセルを抜いてもエンジン回転がさがらないからタックイン姿勢にならず外へずるずると逃げるため、修正舵でインにいれる。当然タイヤと路面との間に余計な摩擦が生じ応力によりクルマが遅れてロールする。そこから加速させようとすると
力がたりない・・・。
まるで、いろいろとまだ開発過渡的な印象が強いクルマです。シャーシはしっかりしているし、サスペンションも設計はともかく取付剛性は高いレベルにあるため、おかしな話、常にアクセルベタ踏みしてタイヤに負荷をかければ、そのポテンシャルの高さは感じるのですが、日常領域、パーシャル域における動きがおおざっぱすぎて、運転が途中から苦行のようにかんじてしまいました。先代のテンロクガソリンAWDのXVのほうがはるかに素直な動きと加速の気持ちよさ、そして車高の高さを感じさせないコーナリング、どれをとっても上でしたね。
新型のクロストレックは全てe-boxerになってしまいました。インプレッサの最廉価グレードにガソリンモデルは残っています。こちらはパドル変速もできますし、私はダークホースではないかと期待しています。これのFFモデル、機会があれば乗ってみたいですね。忖度なしで再評価してみたい。WRXと同じメーカーのクルマだと賛美を送らせてください。どうかおねがいします。
Негізгі бет 【辛口】忖度なし、これがWRXと同じメーカーのクルマ?スバル・クロストレックに乗ってみました。【主観点数20点】【客観点数30点】
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