抗菌薬(抗生物質)が効かない細菌「薬剤耐性菌」が増えています。海外の研究チームが、世界中で多くの死者が出る可能性があると明らかにしました。この菌はどう生まれ、増えるのか医師に聞きました。防ぐポイントの1つは、「薬をきちんと正しく飲む」です。
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そこで今回の#みんなのギモンでは、「抗菌薬が効かない細菌拡大?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●薬剤耐性菌 どうして生まれる?
●どうやって防ぐ? 正しい飲み方
■急速に高齢化…国際社会で大きな問題に
猪子華・日本テレビ社会部記者
「抗菌薬とは抗生物質のことです。海外の研究チームが医学誌『ランセット』で、抗菌薬が効かない薬剤耐性菌によって世界中で多くの死者が出てしまう可能性があると指摘しました」
「報告書によると、薬剤耐性菌による死者は2025年~2050年の25年間で世界で3900万人を超え、さらに約1億6900万人の関連死が出るとされています。高齢者ほど死亡のリスクがあるとして、急速に高齢化が進む国際社会で大きな問題になると懸念しています」
鈴江奈々アナウンサー
「自分自身もそうですが、抗菌薬は子どもが風邪をひいた時などにもらって飲ませることもあるので、背景にそういったリスクもあることが気になりますね」
■治療が難しい感染症が拡大する危険
猪子記者
「そもそも抗菌薬とは、細菌が原因の病気の時に処方される薬です。中耳炎やぼうこう炎、扁桃炎などで細菌が原因の場合に処方されたことがあると思います。細菌などを殺したり、増殖を抑制したりする働きを持つ薬なので、ウイルスには効きません」
森圭介アナウンサー
「細菌とウイルスはそもそも別のものですから、インフルエンザなどウイルスには抗生物質は効きません。細菌に効く抗菌薬が効かない菌が出てきているということですよね」
猪子記者
「抗菌薬への耐性を獲得した、つまり抗菌薬が効かない細菌(=薬剤耐性菌)が既に世界中で増えています。これは1980年代からある問題で、日本でも見過ごせない喫緊の課題です。サイレントパンデミック(ひそかな感染爆発)とも呼ばれ、問題となっています」
「耐性菌が増えるということは、その菌に効く薬が限られるということです。そのため、治療が難しい感染症が広がってしまう危険があります」
■抗菌薬から逃れるために「変異」も
桐谷美玲キャスター
「世界中で増えているということですが、薬剤耐性菌はどのようにできるものなんですか?」
猪子記者
「薬剤耐性菌の研究を行う東京薬科大学の中南秀将教授によると、薬剤に耐性のある細菌は何もしなくても突然変異で生まれることもありますし、抗菌薬から逃れるために変異して耐性を持つこともあります」
■「薬剤耐性菌」どうやって増える?
猪子記者
「こうして生まれた耐性菌は、どのように増えていくのでしょうか? 例えば『5日間飲みきってください』と医師から処方された抗菌薬を、症状が良くなったからと、患者さんが3日で飲むのをやめてしまったとします」
「そうすると、原因となる菌を殺しきれずに、弱った細菌が突然変異で耐性菌に変わることがあります。そして、いつの間にか体の中で耐性菌が増殖してしまいます」
森アナウンサー
「私も若い頃は、症状が良くなると『もういいか』と思って飲まなくなったこともありました」
「症状が出てなくても体の中には細菌がいるので、それを全部なくすために(抗菌薬を)飲みきらなきゃいけない。むしろ飲みきらないと耐性菌が増えるきっかけになってしまうということですね」
■不要な抗菌薬を飲むことで…増殖も
猪子記者
「医師が判断した量をきちんと飲むのが大事です。近頃は減っているそうですが、風邪の時に患者側が『念のために抗菌薬をください』と言ったり、医師が『こじらせて中耳炎や肺炎になるのが心配』と抗菌薬を予備的に処方したりするケースがありました」
桐谷キャスター
「私が子どもの頃は、普通の風邪でも抗生物質を飲まされていた記憶がありますね」
森アナウンサー
「よく処方されていたイメージはありますよね」
鈴江アナウンサー
「抗生物質は効くと思って、積極的に取ろうとしていました」
猪子記者
「私にもそんな覚えがあります。風邪は細菌ではなくウイルスが原因ですので、本来なら抗菌薬は必要ありません」
「中南教授によると、不要な抗菌薬を飲むことで、変異した耐性菌やたまたま体内にいたわずかな耐性菌が、他の細菌が抗菌薬で体からいなくなったことで、より増殖することもあります」
■重症化リスクが高くなる人は?
猪子記者
「そして耐性菌がヒトからヒトへと広がっていくと、抗菌薬の効かない感染症が広がってしまうリスクがあるということです。中南教授によると、免疫力の弱い高齢者や乳幼児、基礎疾患のある方が感染してしまうと、重症化のリスクが高くなります」
河出奈都美アナウンサー
「ご高齢の方だと『心配だから』と(抗菌薬を)もらってしまうこともあるかもしれないので、気にかけた方がいいかなと思いました。やはり気になるのは、私たちはどうやって飲んでいけばいいのでしょうか?」
■厚労省、使用量15%削減を目指す
猪子記者
「正しい飲み方を考えます。薬剤耐性菌への対策は世界的な課題なので、日本でも対策が行われています。厚生労働省が去年発表したアクションプランでは、2027年までに人口1000人あたりの1日の抗菌薬の使用量を、2020年比で15%減らすことを目標にしています」
「この背景には、日本だけでなく世界的にも、不必要な処方が問題視されていることもあるそうです」
■正しく抗菌薬を服用するには?
猪子記者
「では、一般の私たちができることは何なのでしょうか。中南教授によると、まずは医師や薬剤師の指示通りにきちんと抗菌薬を飲むことです。自己判断で途中でやめたり、1回2錠と言われたのに1回1錠にするなど減らしたりしない」
「必要な量を飲まないことで薬剤耐性菌を生み出し、増やし、広げてしまうかもしれません」
「以前飲みきらなかったものを『今回も同じような症状が出ているから』と勝手に飲むのもダメです。今回も同じ細菌が原因とも限りませんし、菌をしっかりやっつけるには量が足りていないかもしれません」
「中南教授は『手元に残っている抗菌薬は捨ててください』と話していました。『念のため』として医師に抗菌薬の処方をお願いするのもやめましょう」
鈴江アナウンサー
「耐性菌が広がっているということで、不安になっている人もいらっしゃると思います。正しく抗菌薬を飲むことに尽きると思いますが、それ以外にはどんなことを心がけたらいいでしょうか?」
猪子記者
「耐性菌には有効な抗菌薬がないこともあるため、まずは感染しないことが重要だそうです。感染予防には日頃から正しい手洗いの徹底など、基本的な対策が重要になるということで、健康に気をつけていくことも大切だそうです。心がけていきたいですよね」
鈴江アナウンサー
「薬のいい部分とリスクとを正しく理解して、きっちりと医師に従って処方されたものを飲みたいですね」
猪子記者
「世界的な問題になっている薬剤耐性菌。さらなる拡大を少しでも食い止めるためにも、処方された薬をきちんと服用するなど、できることをしていきたいですね」
(2024年9月18日放送「news every.」より)
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