仏教に『諸行無常』という言葉があります。
『諸行』とは、「すべてのもの」。
「行」という字が使われているので「すべてのもの」という意味だと思われないかもしれませんが、この「諸行」は、そういう意味です。
「無常」とは「常がない」「続かない」ということ。
この世でずっと続くものは何もない、世の中の一切のものは移ろい変わっていく、一つとしてずっと変わらないものは何もない、と説かれているお釈迦様の教えを『諸行無常』というのです。
この『諸行無常』の教えは、仏教の三法印の一つです。
三法印とは、他の宗教にはない仏教ならではの教え、仏教の特色といえる三つの教えのことです。
その一つが『諸行無常』の教えですから、極めて大事な内容です。
一切のものは続かない、ということは、あなたの今触れているスマホやパソコンもいつか壊れるということであり、今おられる部屋もいつか崩れる、ということです。
大地震で一気に部屋が崩壊することもあるかもしれませんし、そうでなくても、少しづつ変わっています。
だんだん壁はくすんできて、窓は汚れ、じゅうたんはシミがつき、といったように、昨日の部屋と今日の部屋は変わっています。
今おられる部屋も私たちの目からは、昨日と今日とで何も変わった気はしないですが、それはただそう見えるということで、実際は、刻一刻と変わり続けています。
20年後、30年後に久しぶりにこの部屋に入ってみたらどうでしょう。
「これ、あの部屋?なつかしいなあ、こんなに古びてしまって」と感嘆するぐらいに変わってます。
毎日見てるので私たちの思いでは変わっていないように見えても、実際は変わっているのです。
太陽だって無常です。
いつまでも続くものはありません。
あと約60億年で寿命を迎えるといわれています。
そういえば昨日の太陽と比べると、今日の太陽、少し老化したような・・・
とは思いませんが、これも思わないだけです。
昨日の太陽と今日の太陽では、何も変わってない気がするだけで実際には変化しています。
人間もそうですね。
同窓会なんかで20年ぶりに出会った友人に「変わったな」「老けたな」「太ったな」と思います。
もちろんそんなこと言わずに、「変わってないね」と言うのですが。
容姿も変わりますが、場合によってはそれ以上に考え方、物腰、振る舞いなど、いろいろ変わります。
家族のように毎日接している人からすれば、だんだん変わっていくので「うわっ、変わったなぁ」という驚きはないですが、それは毎日見てるから変わってないように思えるだけであって、実際は毎日毎日刻々と変わってるのです。
健康も無常です。
50代からがん検診が勧められるのも、がんにかかる年齢だからです。
歳を取るとだんだんと体の臓器も古く、弱くなり、免疫力も落ちていきます。
ある日、突然人間ドックで再検査の通知が来て、「悪性腫瘍です」と宣告されるので、突然がんになった、としか私たちは思えませんが、実は人体の中でがん細胞は毎日発生しており、免疫細胞とのせめぎ合いをしています。
それが加齢で免疫細胞が弱くなると、がん細胞に負け始め、がんは人体を浸食するようになり、やがて発見できる大きさになって検査で発見される、ということです。
諸行無常の真実を忘れ、「常がある」これは変わらない、と思い込み、ある日突然、その思いが間違いだったことを知らされ、「まさか」とうろたえる、それが私たちの実態です。
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(自己紹介)
1988年早稲田大学を中退し、仏教講師の道を目指す。
浄土真宗親鸞会で仏教講師の資格を取得、全国各地で公開講座を始める。
2010年からメールマガジンをはじめ、読者12000人の仏教最大級のメルマガ執筆
2014年からは全国をつなぐオンライン講座の動画レクチャーでも活動中。
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