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光明身の床の上 一身三観の月満てり
實にや妙なる法の場 身延の山は風の音
水の流れも自ら 諸法實相と響くらむ
此処は何こぞ 名にし負ふ さも恐ろしき龍の口
濱の松風音立てて 岸噛む浪ぞすさまじき
さても日蓮上人は立正安国の一策を 鎌倉殿へ 献ぜしが
忠言耳に逆へば 先の執権時頼の怒にふれて御命
由比が浜辺に砕け散る 水沫となりて消えむこそ
いともはかなき限りなれ
時しも頃は文永の 八とせの九月十二日
夕日も曇る松葉が谷 草の庵を後にして
今宵ぞ死出の旅衣 見渡せば浪漫々の海の上
遠目にそれとわかねども 東の方は安房上総
北は遙に峯続き 賤が苅干す稲村の
みさきにかかる月影は 真如の玉とかがやけど
秋の空とて村雨の 晴れつ雲りつ定めなき
御身の上を観ずれば 路のほとりにさし出づる
松の下枝の露しぐれ うき御袖に拂ひつつ
渚間近き刑場にやがて馬にてつきたまふ
大士の御姿見るにつけ 今や絶えなむ玉の緒を
つなぐ由なき矢来の外 身は悲しくも梓弓
ひきかへさんも かた糸の よるべ渚にひれ伏して
慕へどつきぬ御名残 日郎初め御弟子等が
南無妙法蓮華経 妙法蓮華経と
由比が浜浪こえそへて となふる声も涙なり
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榎本 芝水
エノモト シスイ
職業 薩摩琵琶奏者(錦心流)
肩書 琵琶錦心芝水流宗家
本名 榎本 弁之助
生年月日 明治25年 5月5日
出生地 東京
経歴
幼少から音感に優れ、新内、歌沢を習得、明治42年永田錦心に琵琶を師事、
同年芝水の号を与えられた。43年教授所の開設を許され、門弟指導に尽力。
得意曲は「石童丸」「乃木将軍」「恩讐の彼方に」などで、
これまでの薩摩琵琶に、新内、歌沢、清元などの要素を採り入れ、
繊細、優美な錦心流を演奏した。
没年月日昭和53年 8月19日 (1978年)
出典:日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)
Негізгі бет 薩摩琵琶『龍の口』榎本芝水 小山觀翁撰集
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