They are the materials to read aloud.
日本語音読用マテリアルです。
Longer video: https: • Learn Japanese Through...
Playlist: • Let's read aloud! / ¡L...
スクリプトーーーーーーーーーーー
江戸に魚熊という魚屋がいました。魚を家まで売りに来て、その場で捌いたり刺身にしたりしてくれます。魚は新鮮でおいしいし、捌くのも上手だったから、魚熊はとても人気がありました。でも、酒が大好きで、飲みすぎて失敗することが何度もありました。最近は特に、昼に酒を飲んで失敗して、それでまた酒を飲んで、全然仕事をしない日が何日も続いていました。
年末のある日の早朝、奥さんが魚熊を起こして言いました。
「ねえ熊さん、昨日の晩、約束したでしょう? 今日からちゃんと働いてちょうだい」
「えっ、俺そんな約束した?」
「しましたよ、真面目に働くって。さあ、早く市場へ行って。急がないと、いい魚がなくなるわよ」
「しょうがないなあ」
外はまだ暗かったですが、魚熊はしぶしぶ市場へ向かいました。
しかし、奥さんは一時間間違えていました。早すぎて、市場はまだ開いていませんでした。魚熊は時間潰しに浜へ行って、煙草を吸いました。それから、朝焼けの海に入って顔を洗っていると、何かが足に当たりました。拾ってみると、ずっしり重い革の財布でした。
魚熊は急いでそれを家に持って帰って、奥さんに見せました。財布の中には小判が50枚ありました。魚熊は喜びましたが、奥さんは心配しました。
「ねえ、番所へ届けましょうよ。こんな大金、黙って使ったら死刑よ」
「馬鹿を言うな。これは神様がくれたんだ。よし、俺はもう働かないぞ。旅行したり、いい着物を買ったり、酒を飲んだりして暮らす。おまえも綺麗な着物をたくさん買ったらいい」
「もう…、とりあえず、そのお金は私が預かります。熊さん、今朝早かったから疲れたでしょう? お酒でも飲んで、少し休んだら?」
魚熊は喜んでお酒を飲んで、すぐ寝てしまいました。
「ねえ、あなた、起きて」
昼頃になって、奥さんが魚熊を起こしました。
「いつまでも寝ていないで早く仕事に行ってちょうだい」
「仕事? もうしなくてもいいよ。アレがあるんだから、しばらく遊んで暮らせばいい」
「アレ? 何のこと?」
「アレだよ、アレ。今朝俺が浜で拾った金」
「今朝? 熊さん、今朝はずっと寝ていたじゃない。お金なんて、どこにあるの。この家にはもう借金しかないわよ。お願いだから、ちゃんと働いて!」
「はぁ? おまえ、何言ってるんだ。…まさか、あの大金を独り占めするつもりか?」
魚熊は怒って、家中を探しました。しかし、お金も財布も、どこにもありません。
「本当にもう…、変な夢でも見たんじゃないの?」
「夢? 夢…か…」
「そうよ。お金の夢を見るくらいなら、真面目に働いて稼いできなさいよ。これ以上借金が増えたら、私たち一緒に死ぬしかなくなるわよ」
「えっ? わかった、俺が悪かった。俺が毎日酒を飲んで、真面目に働かないから、あんな変な夢を見たんだな。今日から俺は、もう絶対に酒は飲まない」
魚熊は、反省しました。それで次の日の朝から真面目に働きました。夜明け前から市場へ行って、いい魚を仕入れて、昔の客に売りに行きました。もともと人気の魚屋ですから、すぐに客が戻りました。一年後、借金がなくなりました。二年後、少し貯金ができました。三年後、表通りに自分の店を持つことができました。
その、大晦日の晩。その日も魚熊は、朝から客の家へ魚を売りに行って、それから家へ帰って少し休みました。奥さんは熱いお茶を淹れてあげました。
「あなた、この三年、本当に頑張ってくれたわね。ありがとう」
魚熊は笑いました。
「そうだな、三年前の俺はひどかった。あの頃はよく我慢してくれた。俺のほうこそ、感謝しなくちゃな」
「…ねえ、あなた。ちょっと、これを見て」
奥さんは、魚熊の前に、古い革の財布を置きました。
「これ、覚えてる?」
それは三年前、魚熊が浜で拾った財布でした。中に小判が50枚あります。
「あ、これは…。やっぱり夢じゃなかったのか。おまえ、俺を騙したな」
奥さんは、深く頭を下げて謝りました。
「本当にごめんなさい。あの日あなたが寝た後、私、すぐにこの財布を番所に届けたの。そしてあなたに、夢だと嘘を吐いた。それから一年経って、番所から知らせが来たの。持ち主が現れなかったから、このお金はもう私たちのものだって。そのとき私、本当のことを言いたかった。でも、そうしたらきっと、あなたはまた仕事をしなくなる。だったら、このまま騙し続けようって思った。今のあなたは、もう借金もない、店も建てた。もう大丈夫だって思えた。だからこうして、本当のことを話した。ずっと騙していて、本当にごめんなさい。離婚だと言われてもしかたがないと思ってる」
魚熊は腕組みをして、しばらく奥さんを睨んでいました。やがてため息を吐いて言いました。
「そうだな、おまえの言う通りだ。三年前の俺がその金を使ったら、捕まって死刑になっていた。二年前の俺に渡したら、また仕事をやめていた。おまえはその金を持って黙って出ていくこともできたのに、俺を信じて今日まで待っていてくれた。俺はいい女と結婚した、幸せ者だ」
奥さんはようやく顔をあげました。
「じゃあ、許してくれる?」
「もちろんだ。悪かったのは俺のほうだ」
奥さんはホッとして、魚熊に言いました。
「ああ、安心した。じゃあ、あなた、大晦日だし、久しぶりに飲まない?」
「何を?」
「お酒よ。もう3年も飲んでいないでしょう?」
奥さんは魚熊が好きな料理をたくさん並べて、盃に酒を注ぎました。
「おい、本当にいいのか? 俺、酒を飲んでもいいの?」
「ええ、私が保証する」
奥さんは笑いました。魚熊はしばらく酒に映る自分の顔を見ていましたが、やがて盃を置いて言いました。
「やっぱり、やめる。また夢になるといけない」
おわり
Негізгі бет Let's read aloud! 10 min ③ Shiba Beach
Пікірлер: 4