They are the materials to read aloud.
日本語音読用マテリアルです。
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スクリプトーーーーーーーーーーー
あるところに、萩原新三郎という若者がいました。浪人でしたが、部屋を人に貸していましたから、お金には困りませんでした。
ある日、友達の医者が来て言いました。
「春ですね。近くに綺麗な梅が咲いているところがあります。一緒に見に行きませんか」
「いいですね、行きましょう」
「ついでに、その近くに住んでいる患者さんのところへ行くんですが。ある旗本の別荘でね、とても綺麗な娘さんなんです。そちらも一緒に行きませんか」
新三郎のような浪人は、普通は旗本の家に入ることはできません。しかし医者と一緒であれば入れるのです。新三郎は興味が湧きました。それで二人は一緒に、その別荘へ行きました。
「お待ちしておりました、先生。あのう、そちらの方は…」
娘の世話をしているお米という女が、新三郎を見て言いました。
「友達の新三郎さんですよ。一緒に梅を見に来たので、こちらにも一緒に来てもらいました。お邪魔ですか」
「とんでもない。若いお客様は久しぶりですから、お嬢様の話し相手になってください」
奥の部屋に、綺麗な娘がいました。名前はお露です。新三郎を見ると、青白い顔が赤くなりました。それを見た新三郎も、なぜか顔が熱くなりました。
診察が終わると、お米が医者に言いました。
「先生、あちらでお茶でもいかがですか?」
「ありがとうございます。では、新三郎さんも――」
「いやですよ、先生。
若い人は若い人と、年寄りは年寄りと話したほうが楽しいじゃありませんか。さあ、あちらへ」
新三郎は初めは戸惑いましたが、何を話してもお露が楽しそうに聞くので、嬉しくなって色々な話をしました。
帰るとき、お露は新三郎に言いました。
「新三郎様、また来てくださいね。来てくれなかったら、私、すぐに死んでしまうかもしれません」
新三郎はすぐにまたお露に会いたかったですが、一人では行けませんから、ずっと医者を待っていました。数か月後、ようやく来た医者は、新三郎に言いました。
「残念ですが、お露さんは亡くなりました。お米さんも看病疲れで同じ日に…」
「えっ?」
新三郎は悲しくなりました。無理にでも会いに行けばよかったと、ひどく後悔しました。
その晩、カランコロンと下駄の音が聞こえました。新三郎が外を見ると、牡丹の絵が描かれた燈籠が、ゆっくりと近づいてきます。よく見ると、お露とお米でした。
「あれ? お露さんとお米さんじゃないですか。お二人は亡くなったと聞いたんですが。良かった、大丈夫だったんですね」
「えっ? 私たちも、新三郎様が亡くなったと…」
お露もお米も驚いた様子でした。新三郎は笑いました。
「ほら、このとおり、私は元気ですよ。やっぱり浪人の私と旗本のお嬢さんが会うのは良くないから、医者が嘘をついたんでしょう」
「きっとそうですね。じゃあ私、毎晩こっそり会いに来てもいいですか」
「本当ですか、嬉しいです。元気そうでよかった」
新三郎は、お露の病気はもうすっかり良くなったのだと思って安心しました。
新三郎の家に、占い師が住んでいました。その晩、新三郎の部屋から楽しそうな話し声が聞こえたので、気になって覗いみると、新三郎が若い女と話していました。しかししばらく見ていると、その女はだんだん透明になって、やがて骸骨になりました。
次の朝早く、占い師は新三郎を寺へ連れて行きました。
寺の前の墓地に、新しい墓が二つありました。その小さいほうに、牡丹の絵が描かれた燈籠が置いてありました。
「この燈籠…毎晩お米さんが持っている燈籠だ」
新三郎は怖くなりました。
寺の和尚は、確かに二人は亡くなったと言いました。そして新三郎のために御札をたくさん書いてくれました。
「この御札を家の戸や窓に貼ってください。幽霊がそこを通れなくなります。二人が亡くなった日から数えて四十九日が過ぎるまで、絶対に家の中に入れてはいけません。それができなかったら、あなたの命が危ない」
新三郎は家に帰ると、家中にその御札を貼りました。
夜になりました。カランコロンと、いつもと同じ下駄の音がしました。しかし、家の前でピタリと止まりました。
「どうしたの、お米」
「家に入ることができません。ここに御札があります」
「御札…? では、裏口から入りましょう」
下駄の音が、ゆっくり裏口へ回りました。新三郎は家の中で息をひそめて、その音を聞いていました。裏口の前で、また下駄の音が止まりました。
「お嬢様、裏口も、窓も、御札があります。入ることができません。新三郎様は、心変わりしたようです」
「悲しい…、新三郎様」
お露が泣く声を聞いて、新三郎は苦しくなりました。怖かったですが、あの美しいお露がそこにいると思うと、今すぐ戸を開けてしまいたいとも思いました。
次の日も、その次の日も、下駄の音がして、お露とお米の声が新三郎の名前を呼びました。
49日目、最後の夜になりました。新三郎は、眠ることも食べることも、できなくなっていました。ただお経を唱えて、じっと御札を睨んでいました。
「新三郎様、今夜が最後です。最後に一目会いたい…」
新三郎は黙っていました。しかし、明日からはこの声を聴くこともできないと思うと、悲しくてたまらなくりました。
「もう、朝になります。新三郎様、さようなら…」
お露の声が消えました。外が、明るくなりました。
「夜が明けたか…、お露!」
新三郎は戸を開けました。 外は、まだ朝ではありませんでした。明るい満月の光が、朝のようにあたりを照らしていました。
「新三郎様、ようやく、開けてくれましたね」
次の日、占い師は墓地で、お露の骨を抱いて死んでいる新三郎を見つけました。その顔は、幸せそうに笑っていました。
おわり
Негізгі бет Let's read aloud! 10 min ② The Peony Lantern
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